ラッテの日記

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Netflix配信作品『このサイテーな世界の終わり』感想

 

 Netflixで配信中の海外ドラマ、『このサイテーな世界の終わり』を見終わりました。2シーズン全16話で構成されており、一話あたり約20分という短さで、サクッと視聴することができました。

 今回は、『このサイテーな世界の終わり』のあらすじとキャラクターについて、感想を交えながら紹介していきたいと思います。なお、全てのキャラクターについて言及することが難しかったため、独断と偏見で何人か選んだうえで感想を記載しています。

 

※この記事には、ドラマ『このサイテーな世界の終わり』のネタバレが多分に含まれております。予めご了承ください。

 

 

 

 

 

あらすじ

 自分をサイコパスであると自称する17歳のジェームズは、動物を殺すことに物足りなさを感じ、人間を殺してみたいと考えるようになる。そんな彼に声をかけてきたのは、大胆で我が強いアリッサという女の子だった。ジェームズは初めての「人間の獲物」として彼女に狙いを定め、デートを重ねる。

 ある日アリッサは、家族の葛藤から家出を決意し、ジェームズについてこないかと尋ねる。ジェームズは彼の父親の車を盗み、アリッサと共に生まれ育った家を後にした。

 

キャラクター紹介

ジェームズ

 本作の主人公その1。自称サイコパスの17歳で、父親と二人で暮らしています。幼少期にフライヤーに左手を突っ込んだり、小動物を多く殺したりしているところから、かなり問題を抱えた青年であることが見て取れます。

アリッサと出会い、一緒に行動することで、彼女に好意を寄せるようになっていました。人間らしい感情を知り、それを自覚した後のジェームズは、かなり可愛いし応援したくなります。

 彼の母親は心の病を患っていたような描写があり、彼の目の前で自殺してしまいました。彼が感情をシャットアウトするようになった原因は、恐らくこの母親の死が原因だったと思われます。父親に抱いていた漠然とした負の感情も、もしかすると母親が自殺した理由を父に結び付けていたからなのかもしれません(勿論、この年の多くの子供は親に反発することで成長していくため、一概には言えませんが)。

 

 ジェームズはレイプされかけていたアリッサを助けるため、ある男を殺してしまいます。それが契機となり、二人は一度離れ離れに。一人になったジェームズは、アリッサへの恋心や、彼女がそばにいることで安寧を得ていた自分に気が付きます。「自分は彼女を守っていたのではなく守られていたんだ」と涙を流すシーンは、名場面の一つと言えるでしょう。

 個人的に、アリッサが「二人で殺人を犯した」と発言したことに喜びを感じているシーンもお気に入りです。

 

 殺人の罪を一人で被り、警官に撃たれたシーズン1ラストの展開はかなり衝撃的でした。

 シーズン2で生還していたことが明かされ、アリッサと再会します。回を追うごとにアリッサに引っ張られるジェームズ、という構図が確立していくのですが、特にシーズン2のジェームズはかなりアリッサに振り回されていたというか、尻に敷かれている感があり、ある種の情けなさを感じてしまいました笑 ただそれは、ジェームズが成長し、豊かな人間性を発揮できるようになった証であるのだとも思います。ちょっとワンちゃんっぽいところがありますよね。一度アリッサに逃げられたレストランにまた戻って、彼女を待つところとか。

 どこか頼りなく、大事な所でミスを犯しがちで、それがやっぱり可愛いんですよね。父親との葛藤を解消していったのも良かったです。

この物語の中で、一番変化があったキャラクターとも言えるのではないでしょうか。

 

アリッサ

 本作の主人公その2。傍若無人で、見知らぬカフェ店員や友人にも遠慮のない態度を見せる17歳の女の子です。母親は再婚しており、義理の父は彼女を性的な目で見ているようでした。ジェームズの家庭も複雑ではありましたが、彼女の両親は明確に問題のある人間として描写されています。

 ジェームズが人間的にかなりの変化を見せたのに対し、彼女はあまり大きく変わった様子がない印象があります。クールで怒りっぽくてあまり笑わず、素直にごめんなさいの言えないプライドの高い性格。でも、大事な時に頼りになるのはアリッサの方だったりします。

 全然笑えないタイミングで全然笑えないジョーク(?)を言ったり、何かに耐え切れなくなると関係者を置き去りにして逃げてしまったり、他人への配慮が足りないのが彼女の一番の問題点です。しかし、怒りや不快感をしっかり表に出し、あるがままに生きようとする姿は、個人的には魅力的に感じました。ある意味芯が通っていますし、人の目を気にせず好きに振舞う方が案外生きづらくて難しかったりすると思うんです。

 

 アリッサは多くの男性に傷つけられています。まずは義理の父親、レイプしようとしてきた大学教授(こちらは完全な被害者とも言い切れないのですが……)、それにいい加減な暮らしをしていて、自分の子供を警察に売ろうとした父親。

 物語冒頭で「彼女は好き者らしい」とジェームズが感じたように、性的な事柄に積極的に挑戦しようとするアリッサですが、実は処女を喪失するのはシーズン2になってから。セックスをしようとして失敗する、という描写が何度か見られます。もしかすると、義理の父親からセクハラを受けることに恐怖心や嫌悪感がありつつ、それに抗おうとした結果、ジェームズの言う「好き者」のように見える行動を取っていたのかもしれません。過去にも何度か異性関係のトラブルがあったのかも?

 

 母親ともうまくいっておらず、友人を作るのもうまくないみたいなので、悩みを抱えている時に誰かを頼る経験があまり無かったのではと想像してしまいます。限界を感じては何もかもを置き去りにして逃げてしまう悪癖があるのも、それが原因かもしれません。ジェームズはそんな彼女の性質をある程度把握しているようで、作中何度か彼女がいなくなることを心配しています。それもまたちょっと犬っぽくて愛しくなります。一回逃げられてますしね、実際。ジェームズが犬ならアリッサは猫っぽいかも。

 

 シーズン2では、ジェームズ以外の男性と婚約してしまいます。愛を感じていたわけではないようで、結婚式も放って逃げてしまいます。両親が離婚したこともあり、アリッサの母親が娘のアリッサに執着するようになったという描写がまたなんとも言えませんでした。

 正直、一週目はジェームズに注意を引かれたこともあり、アリッサについてはまだ解釈しきれていない部分も多いと感じましたし、ここでは語ることができていないこともいくつかあります。もしこの作品を見返すことがあれば、アリッサ視点からのこの物語の解釈もしていきたいですね。

 

フィル

 ジェームズの父親。ジャンキーで体に悪いものばかり食べています。ジェームズはそんな父の食生活に嫌悪感を抱いたことがきっかけで、料理を覚えたようです。

 子供の感情への敏感性や危機感が足りない印象があります。13歳のジェームズに狩猟ナイフを与えるところとか。おおらかとも言えますが、母親の自殺を目撃した子供を支えるには少し何かが足りなかったのかもしれません。

 ですが、良い父親であろうと努力しているところはすごく好感が持てます。例えばシーズン2では、養育者のためのプログラムに参加し始めたことが明かされていました。自分を殴って車を盗んで家を出て、さらに殺人を犯して帰ってきた息子を受け入れ、自分の子育て方法を見直そうとするなんて中々できることじゃないですよね。

 

 シーズン1で、アリッサの両親と一緒にガソリンスタンドの監視カメラ映像を確認するシーンがありました。アリッサの両親がすぐに部屋を退出するのに対して、フィルは部屋に残っています。これは、両家族の子供への向き合い方の対比なのではないかと感じました。アリッサの母グウェンは現実(アリッサ)から目を背けて彼女の本心と向き合えない一方、フィルは息子のジェームズの暗い側面を良くも悪くも彼の個性だと受け止め、向き合おうとする。少し深読みのしすぎでしょうか……。

 

 悪いところを指摘もしましたが、かなり大好きなキャラクターです。シーズン2であっけなく亡くなったのが残念。でも、そういう最後はどこかフィルらしいですし、唐突に訪れる離別の瞬間を容赦なく描くところは、この作品の特徴であり良さでもあると思います。

 

ボニー

 シーズン2の重要人物です。アリッサをレイプしようとした大学教授に惹かれており、ジェームズ達に復讐しようと彼らを追います。

 過去描写はかなり短いものの、強烈な印象を受けました。母親からの期待を一身に受け、特に両親の離婚後は激しく束縛されるようになります。隠れて買ったと思われる口紅が見つかり、それを食べさせられるシーンは、一度見たら絶対に忘れられません。

 本当に壮絶な人生だったんだろうなとは思うのですが、彼女について感想を述べるのはかなり難しいです。そもそもあまり好印象を持っていないんですよね……彼女のファンの方がもしいらっしゃったら本当にすみません汗

 

 作品のキャラクター全般に言えることではありますが、特にボニーは、見ていて共感できるなあと思ったところが少ないキャラクターでした。ほとんどないと言ってもいいです。衝動性が強く、嫉妬心からよく事実関係を確かめることもせず人殺しに走ってしまいます。また、酷い怪我を負いながらも、鎮痛剤を服用しながらジェームズ達を執拗に追いかける辺りも恐ろしさを感じます。共感や憐憫より恐怖心を掻き立てられるキャラクターでした。

 男性に無理に迫られたり騙されたりしているところや、苛烈で人付き合いが苦手なところ、問題がありそうな家庭で育っているところなど、アリッサとの類似点も多いです。違うのは、アリッサが殺人の罪悪感をずっと背負っている点と、アリッサの隣にはジェームズがいる点。

 

 彼女についても、まだ考察する余地がありそうです。

 

 

こんな人におすすめしたい

・ファンタジーまでは求めていないが、現実の範囲内での非日常的物語に触れたい

・暗めだが、悲壮過ぎない作品が好きだ

・主要キャラクターは明るく素直な子より、一癖か二癖あったり、ひねくれたりした子の方がいい。もしくは、そういったキャラクターが好きだ

・ありふれたハッピーエンドではない恋愛物語が好きだ

 

 思っていたよりも長くなってしまいましたが、以上になります。イギリスっぽい(?)皮肉の利いたジョークがいいアクセントになっていて、重すぎず、それでいてどこか寂しさや儚さも感じられる良い作品でした。良かったら皆さんもぜひ視聴してみてください。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。